毎日の食事のお供に、そして来客時のご挨拶に。私たち日本人の生活に最も深く根付いている飲み物といえば、間違いなく「日本茶」でしょう。
しかし、ペットボトルのお茶が主流になった今、急須で淹れる日本茶の本当の奥深さを知る機会は少し減ってしまったかもしれません。「緑色なら全部同じじゃないの?」と思っているなら、それはとても勿体ないこと!
今回は、中国茶や韓国茶の世界を巡ってきた当サイトが、改めて私たちの足元にある「日本茶」のディープな魅力に迫ります。まるで昆布出汁(こんぶだし)のような味がする超高級茶から、肩の力を抜いてガブガブ飲める庶民の味方まで。知っているようで知らない日本茶の世界へご案内します。
あの「出汁みたいな味」の正体。最高級茶『玉露』の秘密
高級な日本茶専門店や、旅館などで出されたお茶を飲んだとき。「えっ!?これ、お茶というよりお出汁(スープ)みたい……」と驚愕した経験はありませんか?
その正体は、日本茶の中でも最高級品として知られる「玉露(ぎょくろ)」です。
玉露がスープのような強い旨味と甘味を持つ秘密は、その「育て方」にあります。茶葉を摘み取る前の約20日間、茶畑全体に黒いシートなどを被せて「日光を完全に遮る」のです。
お茶の旨味成分である「テアニン(アミノ酸)」は、日光を浴びると渋み成分の「カテキン」に変化してしまいます。日光を遮ることで、渋みが抑えられ、昆布出汁の成分と同じ強烈な旨味(アミノ酸)が茶葉にギュッと蓄積されるというわけです。
玉露を淹れるときは、熱湯は厳禁。50度〜60度という「手で触れるくらいぬるいお湯」で、じっくりと旨味だけを抽出します。何杯もガブガブ飲むものではなく、小さな器で数滴ずつ舐めるように味わう、まさに「飲む芸術品」なのです。
あなたはどれが好き?日常を彩る日本茶の種類
強烈な旨味の玉露以外にも、日本茶には製法や使う部位によって様々な種類があります。同じ茶葉からこれだけのバリエーションを生み出すのは、日本独自の素晴らしい技術です。
- 煎茶(せんちゃ):
日本茶の代表格で、流通しているお茶の約8割がこれ。太陽の光をたっぷり浴びて育ち、爽やかな香りと程よい渋み、すっきりとした甘みのバランスが絶妙です。 - 深蒸し茶(ふかむしちゃ):
煎茶を作る工程で、通常よりも長く(深く)蒸したもの。茶葉が細かくなりますが、渋みが少なく、まろやかで濃い緑色のお茶が出ます。 - ほうじ茶:
煎茶などの茶葉を強火で焙煎(ロースト)したもの。香ばしい香りが特徴で、カフェインやカテキンが飛ばされているため、赤ちゃんからお年寄りまで夜でも安心して飲めます。 - 玄米茶(げんまいちゃ):
水に浸して蒸した玄米を炒り、煎茶などと半々の割合で混ぜたお茶。お米の香ばしい香りが強く、茶葉が半分なのでカフェインも少なく、さっぱりとした味わいです。
高級茶の知られざる裏技と、庶民の気取らない楽しみ方
玉露の茶葉は「食べる」のがツウ?
実は高級な玉露は、お茶を飲み終わった後の「茶殻(ちゃがら)」もごちそうです。日光を遮って育てられた茶葉はとても柔らかく、栄養もたっぷり残っています。飲み終わった後の茶殻に、ポン酢や鰹節、少量の醤油をかけてお浸しのようにして食べてみてください。信じられないほど美味しく、料亭の一品のようになりますよ!
熱湯でガブガブ!ほうじ茶と玄米茶の「気取らなさ」
玉露や上級煎茶は、お湯の温度を冷ましたり、抽出時間を計ったりと少し気を使います。しかし、リラックスタイムには「細かいことは気にせず、熱々のお茶を飲みたい!」という時もありますよね。
そんな庶民の味方こそが、ほうじ茶や玄米茶です。これらは「沸騰したての熱湯」を急須に直接ジャーッと注ぎ、サッと淹れるのが一番香りが立って美味しくなります。和菓子だけでなく、ケーキなどの洋菓子や脂っこい食事にも負けない香ばしさは、気取らない日常の最高のパートナーです。
日本茶を育てる道具「常滑焼の急須」
日本茶を美味しく淹れるなら、やはり陶器の「急須(きゅうす)」が一番です。特に愛知県の「常滑焼(とこなめやき)」は、土に含まれる鉄分がお茶のタンニンと反応し、渋みをまろやかにして旨味を引き出してくれると言われています。
おわりに
今回は、身近でありながら実はとても奥深い「日本茶」の世界をご紹介しました。
「出汁のような玉露」を一滴ずつ味わうような特別な時間も、「熱々のほうじ茶」をマグカップで飲むような飾らない日常も、どちらも日本茶が私たちに与えてくれる素晴らしい憩いの時間です。ぜひ今夜は、急須を使って温かいお茶を淹れてみませんか?



